2001年07月03日


蔵では、多くの食品会社と同じ様に、熱源をボイラに依存します。
我々のボイラは、38年前の横置多管式煙缶型です。
大豆を蒸したり、製品を加熱したり、色々な使い方をします。
いわば、蔵すべての力の源(みなもと)です。

そのボイラは年一回検査を受け、安全性、耐久性が調べられます。
通常、食品会社では、すべて下請企業に任し掃除、修繕など一切会社は手を出しません。
しかし、この蔵では、毎年蔵人によりボイラの掃除、修繕を行います。
特に、一般的な腐食防止用の清缶剤(化学品)は使用せず、サツマイモを使います。
それは、日本では統一的な規制がなく、食品の安全性を考えると、現在の方法を越える物が、蔵にとって無いからです。

検査員が、「古さを感じない程、良く手入れがして在りますね。」と言われると、
つい、「はい。先輩たちから良く教わりました。」と嬉しくなります。
小さなこだわりかも、しれませんが、
事実38年前のボイラが調子良く、元気に働いてくれます。


「解決の 糸口さぐる 蜘蛛の網。」 
                辰


2001年06月30日

「旅順港にて」 


大連、合弁選別有限公司にて、
選別設備の確認の後、手選別の工場を見る事が出来ました。
日本では、人件費の問題で不可能ですが、中国では人件費が低いため可能な作業です。
日本でいう色相機械選別と同じです。
埃の多い倉庫で、幼い田舎の出稼ぎ女性労働者達が、手を真っ黒にし、埃だらけの顔で、床に広げたゴザに、もやし用の緑豆を50Kg広げ、腐れ豆や、割れ豆を拾っています。

 グループの班長らしき、怖そうなおばさんが、薄汚れた若い女性を叱咤していました。
埃だらけの顔の目の下に、埃を流す涙を見つけた時、辛くなり、
カメラを向ける事が出来ませんでした。(カメラマン失格)
まるでテレビドラマの「おしん」や「野麦峠」の世界です。
 彼女たちは、1日200円で9時間、働くそうです。
それも、出来高払いです。ほとんど、内陸部の出稼ぎ労働者です。
大連の駅前で見た、あの美しい女性と同じ中国人なのでしょうか。
「中国沿岸都市の発展の影に、やはりこんな農民の姿があったのか。」と感じます。
記憶の中、昔の日本も同じでした。

 選別の終わった緑豆50Kg入りの麻袋を、小さな背中に担ぎ、
ゆっくり、腰を据え、歩む姿は、「今の中国を感じます。」

「慈愛満つ 千手観音 風薫る。」 
               辰


2001年06月19日


大連は美しく、ごみの少ない町です。
駅前を歩くミニスカートの女性達は美しく、今までいた北安とは別の国のようです。

 この町は旧満州鉄道の始発駅としても有名です。
実は、旧満州で出来た大豆はほとんど、この港から日本などへ輸出されます。
旧満州(中国東北部)の表玄関というわけです。
近年、急激に変貌する中国の代表的都市で、今までいた内陸部と違い、海を感じます。

 我々は、大連に、2箇所の選別工場を視察し、大豆選別能力の確認のため来ました。
国営の選別工場と、香港との合弁企業の選別工場です。
比較して見ると、明らかに企業として差を感じます。
国営は、設備はあるものの、従業員のモラルの低さが現れており、企業とはいえません。
多分近い将来、おのずと整理されることでしょう。
民間企業は、やはり違います。
利益意識もあり、違和感を覚えませんでした。


「書き止めて 筆の先にて 蝿を追う。」 
                  辰


2001年06月14日


逃げ場の無い西風。
今まで、風は音楽と同じ様に、「強弱」の中から生まれてくると信じていました。
でも、「この風は強、強・・・。」と途切れる事無く吹きます。
さえぎるものが無いと、地平線の彼方から、黒い土埃とともに一気にやって来るのです。

 風は波打つ大地で、緩やかに続く丘を越え、谷を下る。
そして、右の頬を突く。
首に巻いた風除けマフラーは、左に激しく流れる。
畑で、大豆を播種するトラクターの巻き上げる、黒い土埃は、帯となり大地を走る。

 すこし、風が弱くなってきた。
「あっ。」この風も強弱の中に在ったのだ。
波長が、今まで理解していた風よりも、とてつもなく長いことに気付く。
そんな事を教えてくれる、「風の大地です。」


「青葉風 ロマン奏でる 満州路。」 
                辰


2001年06月10日


中国の個人農家では、まだ牛馬に頼った農作業をしていますが、
この引龍河農場では大規模機械化が進んでいます。
年間25,000tの大豆を生産し、輸出は5,000tです。
選別も機械化され、圧搾製油工場もあります。
農民の生活水準は、1月5,000〜6,000円程度の所得で、
農場長の祝さんは「この農場の農民は、とても幸せです。」
と胸を張ってみえました。
そして、遺伝子組み替えの大豆については、絶対にあり得ない事、また、してはいけないとの、言葉が印象的でした。

 農場からの帰り道、通訳の張君は
「確かに、この農場は規模、レベルともに良い方です。」
一般の農民は、もっと低い生活環境にあると、説明してくれました。
確かに、この農場に来る途中の農家は、土壁の藁葺きの家が多く、ロバ、馬そして牛による農作業を多く目にしました。

 自由経済が、共産主義の社会で、貧富の差を広げているのは確かです。

「筆重く 瞼も重き 遠蛙。」 
             辰