2001年06月30日

「旅順港にて」 


大連、合弁選別有限公司にて、
選別設備の確認の後、手選別の工場を見る事が出来ました。
日本では、人件費の問題で不可能ですが、中国では人件費が低いため可能な作業です。
日本でいう色相機械選別と同じです。
埃の多い倉庫で、幼い田舎の出稼ぎ女性労働者達が、手を真っ黒にし、埃だらけの顔で、床に広げたゴザに、もやし用の緑豆を50Kg広げ、腐れ豆や、割れ豆を拾っています。

 グループの班長らしき、怖そうなおばさんが、薄汚れた若い女性を叱咤していました。
埃だらけの顔の目の下に、埃を流す涙を見つけた時、辛くなり、
カメラを向ける事が出来ませんでした。(カメラマン失格)
まるでテレビドラマの「おしん」や「野麦峠」の世界です。
 彼女たちは、1日200円で9時間、働くそうです。
それも、出来高払いです。ほとんど、内陸部の出稼ぎ労働者です。
大連の駅前で見た、あの美しい女性と同じ中国人なのでしょうか。
「中国沿岸都市の発展の影に、やはりこんな農民の姿があったのか。」と感じます。
記憶の中、昔の日本も同じでした。

 選別の終わった緑豆50Kg入りの麻袋を、小さな背中に担ぎ、
ゆっくり、腰を据え、歩む姿は、「今の中国を感じます。」

「慈愛満つ 千手観音 風薫る。」 
               辰


2001年06月19日


大連は美しく、ごみの少ない町です。
駅前を歩くミニスカートの女性達は美しく、今までいた北安とは別の国のようです。

 この町は旧満州鉄道の始発駅としても有名です。
実は、旧満州で出来た大豆はほとんど、この港から日本などへ輸出されます。
旧満州(中国東北部)の表玄関というわけです。
近年、急激に変貌する中国の代表的都市で、今までいた内陸部と違い、海を感じます。

 我々は、大連に、2箇所の選別工場を視察し、大豆選別能力の確認のため来ました。
国営の選別工場と、香港との合弁企業の選別工場です。
比較して見ると、明らかに企業として差を感じます。
国営は、設備はあるものの、従業員のモラルの低さが現れており、企業とはいえません。
多分近い将来、おのずと整理されることでしょう。
民間企業は、やはり違います。
利益意識もあり、違和感を覚えませんでした。


「書き止めて 筆の先にて 蝿を追う。」 
                  辰


2001年06月14日


逃げ場の無い西風。
今まで、風は音楽と同じ様に、「強弱」の中から生まれてくると信じていました。
でも、「この風は強、強・・・。」と途切れる事無く吹きます。
さえぎるものが無いと、地平線の彼方から、黒い土埃とともに一気にやって来るのです。

 風は波打つ大地で、緩やかに続く丘を越え、谷を下る。
そして、右の頬を突く。
首に巻いた風除けマフラーは、左に激しく流れる。
畑で、大豆を播種するトラクターの巻き上げる、黒い土埃は、帯となり大地を走る。

 すこし、風が弱くなってきた。
「あっ。」この風も強弱の中に在ったのだ。
波長が、今まで理解していた風よりも、とてつもなく長いことに気付く。
そんな事を教えてくれる、「風の大地です。」


「青葉風 ロマン奏でる 満州路。」 
                辰


2001年06月10日


中国の個人農家では、まだ牛馬に頼った農作業をしていますが、
この引龍河農場では大規模機械化が進んでいます。
年間25,000tの大豆を生産し、輸出は5,000tです。
選別も機械化され、圧搾製油工場もあります。
農民の生活水準は、1月5,000〜6,000円程度の所得で、
農場長の祝さんは「この農場の農民は、とても幸せです。」
と胸を張ってみえました。
そして、遺伝子組み替えの大豆については、絶対にあり得ない事、また、してはいけないとの、言葉が印象的でした。

 農場からの帰り道、通訳の張君は
「確かに、この農場は規模、レベルともに良い方です。」
一般の農民は、もっと低い生活環境にあると、説明してくれました。
確かに、この農場に来る途中の農家は、土壁の藁葺きの家が多く、ロバ、馬そして牛による農作業を多く目にしました。

 自由経済が、共産主義の社会で、貧富の差を広げているのは確かです。

「筆重く 瞼も重き 遠蛙。」 
             辰


2001年06月03日

植木屋

朝市の人々


麺屋

民族舞踏


黒龍江省北安市。
接待所(宿泊所)の風呂のコックをひねると、赤黒い水です。
その赤黒い水は、体を洗っているのか、汚しているのか判りません。
シャワーの水を顔に当てて、冷たい澄んだ水を想像します。
石鹸を使うと、体の汚れか水の汚れか、判らない色の凝固した泡が足元に貯まります。
日本で当たり前のきれいな水は、ここではカバンのミネラルウォターだけです。

 朝市は、40万人の町を感じさせてくれる場所です。
数百メートル続くメインストリートには、毎朝5時から9時ごろまでは人、人、人。
「どこから来ているのだろう」と感じるくらいに、人間の生活の営みを感じます。
どの顔も、たくましく、黒く、女性でも化粧化はありません。
雑貨、饅頭、麺、パン、たばこ、下着、石鹸、野菜、米、床屋、医者、植物、菓子屋、
中華風お好み焼き屋、服屋、ともかく臨時路上百貨店の様な様子です。

 そして自転車を押すおじさんの首から、職を求めるため「塗装。」「修理。」「工事。」と赤い文字で書かれた看板が、目に焼き付きました。
また、職を逃したようです。

「取替えて 着るも短し 宿浴衣。」 
                辰