2001年03月25日


諺で「箍(タガ)をしめる。」とか「箍が緩む。」と言われます。
蔵で使われている400本程の大桶も、仕込む前に漏れのないように、修繕します。
昔は、「桶屋さん」と言われる桶職人が、蔵から蔵へ移動しながら傷んだ桶を修繕したり、新しい箍をしめたりしていました。

 当時、蔵に来た桶屋さんの所へ行くと、箍用に使う竹を割る音が、「パリ、パリ、パリ。」と乾いた気持ちいい音がしていました。蔵の中、「渇。」でも入れるような音でした。

 現在は、桶職人は居なくなり、修繕は蔵人が行います。
竹箍(タケタガ)は出来なくなり、鉄箍(テツタガ)で修繕します。
この蔵もだんだん竹箍のある大桶が、修繕の度に鉄箍に変わっていきます。
少し、寂しい気分にもなりますが、大桶を長持ちさせるためには、仕方ありません。

 それでも、大桶は生き続けます。

「逢引の 場所は氏神 猫の恋。」
               辰


2001年03月14日


昨日の、強風が嘘のようなポカポカ陽気です。
「春一番」とこの時期の強風を言いますが、これで何回目の強風だったでしょう。
たしかに、強風の度に、春はやって来ています。

 蔵のそばの、畦道(あぜみち)で、春の日差しの中、タンポポを見つけました。
見逃してしまいそうですが、綺麗に咲いています。

 蔵のすぐ横には、浄土宗の「行福寺」という大きな山門のある寺があります。
その寺に、素敵な「しだれ桜」があり、小生にとって、どこの桜よりも好きな桜です。
決して、たくさんの見物人は来ませんが、蔵の昼休みに、食後の散歩には、最高です。
その「しだれ桜」も、つぼみが膨らみ、今年は多分最高の花を咲かしてくれるでしょう。
いまから、年甲斐もなく、うきうきします。

 いつまでも、こんな気持ちを持てる蔵で在りたいですね。

「酒好きは ポックリ逝くか 春の雷。」
                  辰


2001年03月12日


天気も最高で、小春日和です。
今日、名勤生協コープメイトの皆さんの見学がありました。
この蔵には、日々たくさんの見学の方々が来蔵されます。
毎回、是非に「味噌のことを理解して頂こう。」とご案内しています。

 蔵には、見学コースはありません。蔵人と同じところで同じ目線で、見たり、感じたりして頂いています。
最近、見学コースのある「見せる工場」とかが多くなりました。
でも、見せる工場には、見せられない所ができるのではないでしょうか。
我々のような蔵では、目線は常に、同じところに在るべきではないでしょうか。

 あるべきものが、あるように、飾らず、気取らず。
そんな、蔵があってもいいのではないでしょうか。

「ホワイトデー 薄き財布に 山笑う。」
                  辰


2001年03月04日


少しずつ、春の足音が聞こえてきました。
花屋さんの軒先に置かれる草花から、早春の匂いが漂います。

 味噌蔵では、冬から春にかけて、毎日近隣の農家から、大豆が持ち込まれます。
晩秋に刈り取った茎付き大豆を、干し(乾燥)、叩き脱粒し(米作で言えば脱穀)
そして、選別したピカピカの大豆です。
「蒸して食べても美味しかったよ。食べてごらん。」と自慢顔に言うおばさんの
笑顔は、とても綺麗です。

 蔵では、大豆と、味噌や溜(醤油)と交換しているのです。
もしも、大豆がたくさんあれば、無期限の交換券を発行しています。
昔から行われている、お金ではない、物々交換ですが、暖かさを感じます。
味噌屋は農業の一種かもしれません。

 そして・・・その大豆が、また味噌や溜に変わります。

「福耳に 似合いのピアス 櫻貝。」 
                辰


2001年02月20日


大桶を見ると、その大きさに目が行き、見上げてしまいます。
しかし、その大桶は、十数本の輪切りにした木の上に乗っています。
大桶が、長持ちするように風通しを考え、また桶漏れがあったら、
すぐに分かるようにと、乗っているのです。
蔵では、輪切りの木の上に、桶を乗せることを「盤木(ばんき)をかう。」
と言います。
その高さは、蔵人の胸板の厚さと同じです。
もしも、桶漏れが出た場合、胸板の厚さがあれば、
桶下に入ることができるからです。
大桶は、そんな蔵人達に守られているのです。
胸板の厚さなんて、素敵ですね。

「寒明けの 桶間に匂う 麹棚。」
               辰


寒仕込み(踏み込み)西蔵にて